ユカヌバタイムス

21

Aug

ACTIVE DOG

盲導犬・引退犬との暮らし
〜引退犬ボランティア・赤羽さんご一家インタビュー〜

視覚障害を持つ人の生活に寄り添う盲導犬は、1歳を過ぎると盲導犬になる訓練を受け2歳前後から約8年間、盲導犬として活躍、10歳になると引退します。では引退した盲導犬はその後どんな生活を送っているのか。引退する年齢やその理由については、盲導犬1頭1頭それぞれに違いがありますが、大体の場合、引退犬を引き取るボランティア家庭で過ごしますが、「富士ハーネス」にある引退犬のための部屋でみんなに愛されて、のんびり過ごす犬もいます。ここでは引退犬のその後の暮らしぶりについて、赤羽さんご一家にお話を伺いました。

犬と暮らすのは始めてだった赤羽さんご一家のところへジムがやってくる

引退犬ボランティア・赤羽秀治さん(中)、尚子さん(右)、結衣さん(左)/ジム(10歳)

5年ほど前、お仕事の関係で日本盲導犬協会の神奈川訓練センターを訪れたという赤羽秀治さん。子供の時は犬と一緒に暮らしていたことがある秀治さんが、ここに出入りするなかで引退犬ボランティアという制度を知ったことが大きなきっかけだったそうです。

「当時、高濃度炭酸泉製造装置の仕事に携わっていまして、盲導犬の足のケアで炭酸泉が使えないかという相談を神奈川訓練センターで働く職員の方からいただき、ここへ来たのがきっかけです。そのとき、職員さんから引退犬ボランティアの話を聞き、家を戸建てにしたタイミングも相まって、是非一緒に生活したいということで自宅に帰って家族と相談しました。私は子供時代に犬と暮らしたことがあるんですが、家族になってからはまだ一度も犬を迎えたことがなかったので妻、娘、息子に了承を得て日本盲導犬協会のホームページから応募させていただきました。そして約半年後にうちへ来たのが当時6歳10ヶ月だったジム(♂)です。ジムはまだ盲導犬を引退するには少し若かった様ですが、盲導犬協会の判断で早めの引退となったようです」

ジムと一緒に暮らし始めた当初、富士山の五合目へ登った時の写真。©赤羽秀治

4年前から毎日、ジムの体調は手帳に書き込んで管理する徹底ぶり

6歳のジムを迎えての暮らしにはどんな変化が起こったのでしょうか。

「盲導犬として人と暮らしていてとてもお利口ですし、しつけなどの問題はありませんでした。でも引き取った際に、盲導犬協会の方から『筋肉をつけるために、毎日最低1時間は散歩させてください』といわれたときは驚きましたね(笑)。もちろんいわれた通りに散歩をはじめましたし、今では朝5時から私が1時間半程度。夕方の日が落ちた時間にも20分から30分ほど、娘や妻が散歩へ連れて行って1日2時間は歩かせています」

朝の散歩は秀治さん。夕方の散歩は娘の結衣さんか奥さま・尚子さんの担当になることが多いそう。

もちろんジムの健康管理はそれだけではありません。

ジムノートは現在4冊目。

「4年前の7月25日に引き取ったんですが、初めの2、3日を除いて毎日、ジムの散歩時間や食事の量、トイレの時間などをメモしているノートがあるんです。妻がつけ始めてくれたんですけど、今では4冊目になります。何時に散歩へ行って、何時にトイレをして、どんなことがあって食事をどのくらい食べたかというのを記録しています。もちろん食事やトイレ以外、予防接種を受けたことやちょっとした変化も記録しています。
ノートの記録に加えて、便は必ずエチケットシートにさせるようにしています。そうすることで便の臭いや色、量や硬さまでちゃんとチェックできるので。
あとはブラッシングですね、ジムはブラッシングが好きでやってあげるとうっとりした表情になるんですけど、そうやって触れ合いながら身体に異常がないか、逐一チェックするようにしています」

ジムと生活することで地域とのつながりが深く、密になった

ジムを預かって5年目になる赤羽さんご一家ですが、変化があったのは家の中だけではないそうです。

「普段、自宅(横浜青葉区鴨志田)の近くの『寺家ふるさと村』という場所を散歩しています。『ふるさと村』は里山あり谷あり田んぼありで、車の通行も少ない閑静で綺麗な場所なんですけど、そこをジムと散歩をし始めてから2、3ヶ月たった頃『鴨志田わんわんクラブ』に入会したんです。鴨志田公園という場所がありまして、そのドッグランではリードを離して自由に遊ばせることができるんですけど、そこを管理していたのが鴨志田わんわんクラブだったんです。
鴨志田わんわんクラブに入ってからは、月に一回公園掃除をしたり、近くにある小学校のバザーに参加したり、夏祭りのときには警備をしたりしているんですけど、そうやって地元地域とコミュニケーションが取れるようになったのはジムがいたからに他なりません。
お散歩させるだけでも近所の人々との間に挨拶が生まれたり、ちょっとしたことで声を掛け合うことが増えました。今や日本は高齢化社会といわれていますし、これからどうやって地域と交流していくかが大切になってくると思うと、とてもいいきっかけだったと思います」

鴨志田わんわんクラブが作る冊子には赤羽さんとジムの写真も掲載されている。

「鴨志田わんわんクラブの会員は『わんわんパトロール』とういスイングボード(写真参照)を鴨志田緑小学校のPTAから用意していただいています。空き巣や誘拐事件など、最近は痛ましい事件もたくさん起こっていますから、これをつけてみんなで散歩をすることで少しでも犯罪の抑止になればいいなと思っています。あとは震災など、さまざまな災害があったときでも、ジムを通して仲良くなった人々と地域を上げて助け合えるよう、声を掛け合っています。そうやって自分たちと外の繋がりが出来ることは、想像以上に素晴らしいことでした」

愛情をいっぱい受けて暮らすジムの表情は健やか。

「その他にも盲導犬協会が開催する季節物のイベントや啓発活動、募金活動に参加させていただくこともあります。ジムが健康体で、大きな病気にならないのはとても助かりますし何はともあれ、可愛くて仕方ないですね。ジムを預かって本当によかったと思いますし、最後まで添い遂げるぞという気持ちで1日1日を過ごしています」

愛犬との生活だけでなく、お散歩というライフワークの中から生まれたコミュニケーションが実を結び、交友関係の広がりや地域との交流につながるとはとても理想的な生活ではないでしょうか。
またワンちゃんと生活するという経験がなかった奥さまや娘さんも口を揃えて「ジムだったからこうやって生活できていると思う」と語っていた姿が印象的でした。

今回は子犬のときから育てる場合とは一味違った、賑やかだけど落ち着いた愛犬との暮らしがあることに気づかされる、心温まるインタビューとなりました。

text : Wakako Matsukura

photo : Masahiro Yamamoto

取材協力 : 日本盲導犬協会

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