ユカヌバタイムス

6

Sep

ACTIVE DOG

盲導犬とともに豊かな暮らしを
〜盲導犬ユーザー・碇谷純子さんにインタビュー〜

目が見えない、見えにくいという視覚障害者に寄り添い、日常の歩行を手助けする盲導犬。今回は、日本盲導犬協会を通して2頭の盲導犬と出会い、9年にわたって生活をともにしているという盲導犬ユーザーに直接お話を伺いました。

きっかけは「自由に出かけたい」という思い

盲導犬ユーザー・碇谷純子さん/ジーン(2歳)

先天的な網膜色素変性症により、2009年から盲導犬とともに暮らしているという碇谷純子さん。碇谷さんは現在、家族に加え2頭目となるジーンと生活を送っています。碇谷さんはどんなきっかけで盲導犬に出会ったのでしょう。

碇谷純子さんはこう話します。「私は子供のときから、夜になると目が見えづらかったり、暗いところを歩きにくく感じていました。中学生になると黒板や教科書の文字が見にくく、3〜4年後には道路の白線はなんとか見えるけど、動いているものを捉えられず歩くのも不安になってきて。20代前半で結婚、出産を経験したのち、30代後半には家族、友人、ガイドヘルパーさんの手助けがないと外へ出られなくなりました」。

徐々に目が見えにくくなる中で、碇谷さんは杖を使っての歩行を試みたそうです。「人の手を借りての歩行は安心ですが、急な予定やちょっとした買い物で誰かに頼るには難しく、出かける範囲にも限界があったんです。でももっと気軽に、自由に出かけたくて。そこで進められたのが白状訓練、杖を使っての歩行でした。しばらくは白杖訓練をしていたんですが、なかなかうまく歩けず、続けるうちに怖さも芽生えてしまったんです。そんなとき、白杖訓練の訓練士の方から『盲導犬歩行はどうですか?』とお話をいただき、日本盲導犬協会を紹介してもらいました」。

盲導犬歩行に感動し、1頭目の盲導犬・スフレとの生活が始まる

初めて盲導犬と歩いたとき、碇谷さんはすぐに「これなら私も歩ける!」と実感されたと言います。「教えてもらってすぐ、日本盲導犬協会で行なわれている説明会へ参加し、実際に訓練センターの外周を訓練犬と歩かせてもらったんです。盲導犬は物にぶつからないよう、くねくねと進んでいくんですけど、歩くスピードとその動きが、私が望んでいた歩き方とピッタリ合ったんです。本当に感動しましたね、『これなら私でも歩ける!』ということで、盲導犬歩行を選びました。それから3年後、やっと1頭目のスフレがうちへ来ました」。

碇谷さんがいつも持ち歩いているバッグには、スフレの写真が大切につけてあります。「スフレを迎え入れた当初、これまでの生活に突然、盲導犬の世話が入ってきて、お互いの生活のリズムが整うまではあたふたしていました。トイレを済ませたか、ご飯はいつあげたか、『あれ? どうだったっけ?』なんて忘れることも多くて。でもしばらくして慣れてきたらお互いの動きに気を配り、常に気配を感じながら生活するのが普通になりました」。

そんなスフレは8年間の共同生活を終えて去年引退したのだそう。引退する直前に出かけた岩手旅行では、船の中から夢中になって魚を追いかけるスフレを見て『お魚と遊ぶのが好きだったんだ』なんて新鮮な発見があったり、とても素敵な思い出になったとか。

去年から一緒に生活しているジーンとは絆を深めている最中

スフレが引退した後、碇谷さんの元に来たのが2歳になるジーンです。

「ジーンとは、5月でちょうど1年になります。スフレが活発で天真爛漫な性格だったのに対して、ジーンはマイペースで猫っぽい(笑)。同じ訓練を受けている盲導犬でも、段差や角などの伝え方は犬によって違うんです。そこでときどきジーンが私に出しているサインに気づけず、ジーンが自信をなくしてしまうこともあります。だから今はジーンとじっくりとコミュニケーションをとって、ちゃんと信頼関係を築き上げているところです」。

ジーンとの暮らしで、碇谷さんが気をつけていることとは?「毎朝、ジーンのトイレと食事の世話から1日がスタートして、午前中には1時間〜1時間半の散歩へ欠かさず出かけます。家の中ではボールや噛み付いて遊ぶおもちゃでコミュニケーションをとっています。あとは意識してジーンの体に触るようにしています。お家へ帰って来たらタオルで全身を拭いてあげるんですけど、その時に肌に発疹ができてないか、触って痛がる場所や怪我はないかなど、スフレのときもそうでしたけど、うちの子達のちょっとした異常にはお医者さんより先に気付ける自信があります(笑)。そのくらい念入りな観察が必要です」。

盲導犬と歩くようになって感じる他者とのつながり。そして、さらに盲導犬を知ってもらうことの必要性

盲導犬と歩くようになって9年。自由に出かけられるようになり、新たな出会いや気付きがあったという碇谷さん。

「スフレやジーンと共に生活することで、盲導犬をサポートする方々との出会いがありました。今使っているジーン用のバッグは、小物を作っている方にお願いして片手で開閉できるガマグチタイプを作ってもらったんです。あとスフレの写真をつけているショルダーバッグも、盲導犬をお通して出会った方が作ってくださったんです。昔は目が見えなくなることで、性格まで内向的になっていたけど、街中でワンちゃん好きの方から声をかけられることから歩行の手助けをお願いできたり。私自身の気持ちにも豊かな変化がありました」。

「またそれと同時に、再確認したこともあります。盲導犬と一緒にいることで歩ける範囲が広くなる分、出かける先々ではまだまだ盲導犬だけでなく、人の手助けも必要だということ。例えば、近所は毎日歩いているので地図が頭の中にあるんですけど、初めて行く場所ではどこに何があるかわからない。また盲導犬は角や段差を認識しても、そこに人が立っていると避けてしまう習性があるんです。そんな時は私が声を出して道を教えてもらったり、道を開けてもらうこともあります。それについては、私たちがもっと積極的に街へ出ることで、いろんな人々へ盲導犬を知ってもらい、理解してもらえるようしなくてはと思っています」。

同じ訓練センターで歩行訓練などをしても、犬が本来持つ性格や気質によって実際の歩き方やサインの伝え方には個性があることを改めて知った今回のインタビュー。今は右目でぼんやりと光をとらえるくらいまでになった視界でも、晴れやかな顔でテキパキと歩みを進める碇谷さんは、ジーンに注意深く気を配りつつ、深く信頼しているようでした。このように一人でも多くの視覚障害者の方が盲導犬と巡り合えることを願って、次回は盲導犬の子犬の時のお話を掘り下げたいと思います。

text : Wakako Matsukura

photo : Masahiro Yamamoto

取材協力 : 日本盲導犬協会

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